【コラム】佐藤蓮、挫折を乗り越え手に入れた強さ

(写真:菊山 英志)

「心技体」
スポーツの世界では、最高のパフォーマンスを発揮するためには精神力(心)、技術(技)、体力(体)の三位一体が必要であるとされている。

2016年全日本カート選手権FS125部門も全6戦中4戦までを消化しているが、東地域では佐藤蓮が4戦すべてをポールトゥウィンという圧倒的な強さをみせており、今シーズンのタイトル最有力候補だ。そんな佐藤は、心技体が極めて高い次元で融合しているように見える。

2012年 ジュニアカート選手権 FP-Jr Cadets部門、2013年 ジュニアカート選手権 FP-Jr部門、2014年 地方カート選手権 東地域 FS125部門と、参戦したクラスすべてにおいてタイトルを獲得してきた佐藤は、昨シーズンに全日本カート選手権FS125部門にステップアップした際も、圧倒的な速さをみせておりタイトル候補の一人であった。しかし、昨シーズンは度重なるアクシデントやトラブルによって、優勝回数1回、シリーズランキング5位という結果に終わった。数々のタイトルをその手中に収めてきた佐藤にとって初めて味わう挫折だった。

「しっかりとタイトルを獲得してから進みたい」と、2016年シーズンも全日本カート選手権FS125部門への参戦を決めた佐藤は、その言葉通りタイトル獲得へ向けてまっしぐらだ。

苦渋を味わった昨シーズンと、圧倒的な強さを見せる今シーズンでは一体何が違うのだろうか?

「昨年は焦りがあって、それですべてがうまくいかなくなってしまいました。」と昨年の敗因を佐藤は振り返る。

過去の輝かしい成績からも分かるように佐藤の速さに疑いはなく、昨シーズンも十分な速さを見せていた。しかし、思うようには結果に繋がらなかった。勝てる速さがありながらも勝てない。勝てないことが焦りを生み、その焦りがまた勝利を遠ざけていた。

一転して今シーズンは負け知らずの4連勝で、昨シーズンの悪循環を完全に断ち切った。その要因は「ともかく落ち着いてレースをするだけ。」と語る。

今シーズンの佐藤のレースは実に淡々としている。トラブルに見舞われて思うように走れない状況でも、慌てず騒がず動じずに最善を尽くす。ポールスタートから順位を落とすシーンがあっても、焦ることなく確実に狙い澄ませて順位を取り返す。落ち着いてやれば勝てるという自身の言葉を証明するかのごとく、ここまでの4戦すべてのレースを掌握している。

レースに勝つために必要な要素は人それぞれ異なる。佐藤にとっては、焦りという心を乱す魔物に打ち勝つ強い精神力だったのではないだろうか。心技体が充実し、天性の速さに強さが加わった佐藤は、この先タイトル獲得に向けて強まるプレッシャーもきっと跳ね除けることだろう。シーズンも残すところあと僅かだが、佐藤の走りから目が離せない。

REPORT / PHOTO 菊山 英志

(写真:菊山 英志)

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